手間と時間がかかりやすく、ビジネスのボトルネックになりやすい業務の一つが、契約業務です。ミスが許されない契約業務において、そのスピードや効率を高めるのは難しく、課題感を感じている企業も少なくありません。そこで近年注目度を高めているのが、CLM、契約ライフサイクルマネジメントシステムという考え方です。ここではCLMの概要や注目の背景、そのメリットなどについて、詳しく解説していきます。

CLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは

まずはじめに、CLMの概要と注目される背景について解説していきます。国内では比較的新しい取り組みとされていますが、その市場は確実に成長をしています。

契約業務を最適化する注目のシステム

CLMとはContract Lifecycle Managementの略で、契約業務に関するライフサイクルを最適化し、ビジネススピードを向上させる取り組みやシステムのことです。

契約業務には、契約の締結前から締結後までさまざまなフローがあり、それら一つひとつを確実に遂行していかなければなりません。この一連の業務フローを、テクノロジーを活用して管理し、より正確で迅速に執り行えるようにしてくれるのが、CLMなのです。

米国で市場が急拡大中

日本国内では比較的新しい取り組みとして注目されはじめているCLMですが、米国では既に一大市場を築き上げています。MGI Researchの予測によれば、その市場規模は2,000億円超、年平均成長率は12%前後と急拡大しています。

また国内でも、CLMに内包される要素の一つである電子契約サービス市場が急成長しており、ITRの調査では2023年度に200億円規模の市場になると予測されるなど、CLM市場は国内においても確実に成長しています。

CLMに注目が集まる背景

契約業務のフローは、契約書の受付に始まり、契約書の作成や修正、契約の締結やその後の管理など多岐にわたり、各段階において内部承認も必要になるなど、かかる手間や時間は決して少ないものではありません。加えて各業務の内容も細かく、ミスが許されない慎重さも求められるため、ビジネスのボトルネックになってしまうケースも多くあります。

こうした課題を改善し、ビジネススピードを加速させてくれる存在として、CLMはその注目度を高めているのです。

CLMを構成する契約業務のフロー

CLMの概要やその現状について理解したところで、ここからはCLMを構成する契約業務のフローについて、細かく見ていきましょう。

契約発生

契約業務の始まりは、取引の発生とそのための契約書作成からスタートします。もしも発生する取引に適した契約書のひな型がある場合は、それを取引先へと提示し、内容を確認してもらいます。適切なひな型がない場合、過去の契約書や取引の内容を参考にしながら法務担当者がドラフトを作成するケースも。また場合によっては、取引先が契約書を作成し、それを自社で確認する形で契約を進めることもあります。

契約審査

作成した契約書について、取引先から修正の依頼が入ったり、取引先から契約書を提示された場合は、自社内で契約審査を行い、その内容を細かくチェックします。そこでは、誤字脱字のようなシンプルなミスはもちろん、自社にリスクがあるような条文が含まれていないか、万が一トラブルが発生した際にどのように対応するのかなど、どれだけ小さな懸念点であっても見逃してはいけません。

契約交渉・修正

契約審査によって、自社に不利な条項など変更したい箇所が見つかった場合、その内容について取引先と修正の交渉を行います。取引先からの修正依頼が来た場合は、内容に問題ないかチェックします。修正箇所の確認を重ねて、お互いが納得できる内容になるまで繰り返し、最終版を作成します。なお、契約書は最終版だけでなく、途中のバージョンも残しておくと、修正の経緯が見えて次回以降の契約書作成での参考になります。

契約稟議・締結

契約書の最終版ができたら稟議申請を行い、承認が下りたら正式に締結します。紙の契約書で締結する場合は、2部作成して押印した上で取引先に郵送し、押印済みの1部を返却してもらいます。電子契約の場合は、PDFデータを取引先に送信し、電子契約サービス上で締結処理をしてもらいます。

契約書管理・更新

最後に締結した契約書を保存し、法で定められた期間管理します。自動更新ではなく、改めて契約書を締結して更新する必要があるものは、期限が近付いたタイミングで担当者に連絡して更新の有無を確認します。また、自動更新の契約書をそのままにしておき、不必要な契約書が締結され続けてしまうことがないよう管理します。

CLM導入のメリットと注意点

契約業務を効率化するCLMを導入するメリットは多岐に渡ります。その一方で、導入時には注意すべきポイントも存在します。それぞれ具体的に見ていきましょう。

契約を一元管理

契約書はもちろんのこと、そこに至るやり取りの経緯などもデータとしてシステム上に保管できるようになり、関係者の誰もが即座にアクセスして参照できるというメリットがあります。検索することも可能なので、過去の事例やトラブルを随時参考にできます。

また、紙と電子データの契約書のどちらもシステムに保管でき、データを一元管理できるため、営業担当に個別連絡して書類を取り寄せたり、契約書の束をあさったりしなくてよくなります。

契約業務を効率化

一元管理によって契約に必要な情報を即座に検索し、引き出せるようになるため、契約業務を大幅にスピードアップして効率化することが可能です。契約書のステータスや更新期限などをシステム上で管理できるので、案件ごとにメールを遡って探したり、進捗状況を共有フォルダに手入力したり、更新内容をExcelなどに保存したりといった作業からも解放されます。

スムーズな契約業務をサポート

案件ごとの契約書の進捗状況や経緯などがシステム上で可視化されるため、対応の抜け漏れなどのミスや管理不備を防げます。契約の背景やフィードバックの内容なども蓄積でき、万が一トラブルが発生した際も過去の状況を参照しながらスムーズに対応可能です。

CLM導入の注意点

CLMを導入する場合、セキュリティ対策には注意しましょう。契約書は機密情報であり、情報漏洩があった場合は損害賠償などに発展するリスクがあります。通信の暗号化や堅牢なサーバなど、セキュリティ対策が万全なシステムを選ぶようにしましょう。

また、CLM導入には費用がかかります。自社にとって必要な機能を洗い出し、必要十分な機能を有したシステムを選ぶことで、コストの適正化が図れます。機能面、費用面、セキュリティ面など様々な観点からシステムを比較検討し、自社にとって最適なサービスを選びましょう。

契約書を一元管理してビジネスを加速させよう

CLMの概要や導入のメリット、注意点などについて解説しました。CLMは契約業務を効率化できるだけでなく、ミスを防ぎ過去の事例を参照できるといったメリットがあります。導入の際は、自社にとって必要な機能を有した安全なシステムを選ぶようにしましょう。

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