どの業種でも、事業を進める上で、会社はさまざまな契約を締結します。「取引先とどんな契約を結ぶのか」を法的な観点からチェックする契約書レビューは、会社の利害に直結する極めて重要な仕事です。この記事では、企業法務に必要不可欠な契約書レビューのフローをイチからわかりやすく説明していきます。
目次
契約書レビューとは
契約書レビューは、契約書を法律的な観点からチェックすることです。「リーガルチェック」という言葉でもよく知られています。もし、契約書の内容に不備があれば、大きなトラブルの種にもなりかねません。契約書を締結する前に、あらゆるリスクを洗い出す必要があります。
最近は、契約書をアップロードするだけで、自動で契約書のレビューを行ってくれる、AIのサービスも広がってきています。しかし、専門家の力を借りるにしろ、AIを活用するにせよ、契約の担当者が、洗い出された契約書の問題点やリスクを踏まえて、どう進めるか決めていかなければなりません。契約書のレビューをどのように行うかのフローは、誰もが知っておくべき知識だといえるでしょう。
契約書レビュー業務のやり方・流れ(自社で作成した契約書の場合)
契約書には、大きく分けて2つの種類があります。一つは「自社で作成した契約書」で、もう一つが「取引の相手方が作成した契約書」です。
自社で契約書を作成する際は、社内の契約書テンプレートをビジネス実態に合わせて修正・加筆します。そのときに修正や加筆部分が、法的に問題がないかどうか。法務部が契約書レビューを行い、現場の担当者にヒアリングしながら、契約書を固めていきます。そのうえで、相手方に確認してもらい、修正希望箇所があれば、すり合わせを行っていくという流れになります。
当然のことながら、自社で作成した契約書については、どんなことが定められているのかは把握しています。そのため、相手側の修正内容を検討すればよいことになります。
契約書レビュー業務のやり方・流れ(相手方が作成した契約書の場合)
一方で、取引の相手方が作成した契約書については、まずは契約書の内容を把握することから始めなければなりません。ステップごとにチェックすべきポイントを、その目的とともに解説していきます。
STEP1.契約内容の把握
取引の相手方が作成した契約書をレビューする場合、まずは契約内容を把握することがスタートとなります。どんな取引を行おうとしていて、契約書を交わす目的は何なのか。そもそも、契約を交わす必要があるのか、という点を確認します。
例えば、「新商品を共同で開発する」というプロジェクトを行うのであれば、相手方に自社の情報を開示することになります。その際に、自社の情報を不正に利用されると困るので、秘密保持契約を結ぶ必要があります。この場合、契約の目的は「秘密情報の漏洩や不正利用を防止」ということ。そんな目的を踏まえれば、もし相手方が情報を漏洩したり、不正に利用したりして、自社に不利益をもたらした場合、ペネルティの内容も契約書で定めておかねばならないでしょう。
このように「何のために契約を結ぶのか」ということを再度確認し、誰に聞かれても、きちんと説明できるようにしておくこと。そうして、行う取引の内容と契約書を締結する目的がしっかり把握できたら、具体的な契約期間や契約金額がどうなっているのか。「いつまで契約関係が続くのか」「いつまで権利を持つのか」「いつまで義務を負うのか」などを確認したうえで、次のステップへと進みます。
STEP2.リスクや問題点の抽出
想定している取引や契約書の内容が把握できたら、次にリスクや問題点がないかどうか、契約書の内容を吟味します。まずは、自社で認識していたとおりの目的物と対価が、定められているかどうかをチェックします。
売買契約であれば「目的物は何なのか」「目的物の引渡しはいつ、どこで行うのか」「代金はいくらをいつどうやって支払うのか」という点を確認して、適切かどうかを検討します。対価については、金額の数字ばかりに目がいきがちですが、単価なのか月額なのかで変わってきます。支払い方法についても、確認することを忘れないようにしましょう。
そのうえで、取引の内容に応じて、必要な取り決めがきちんとなされているのか。「必要な条項があるかどうか」だけではなく、「不要な条項がないか」も確認することが重要です。似た条項がある場合は、行き違いが発生する恐れがあるので、相手と話し合い、整理して一つの条項にまとめておくと、より安心です。
損害賠償や違約金に関する項目にも注意が必要です。「ウチが契約違反をすることはまずないから、大丈夫だろう」と、安易に高額な損害賠償の支払いを定めてしまうと、トラブルのもとになります。契約違反時のペナルティも、一般的に設定されているものから逸脱していないかどうかを、確認するようにしましょう。
STEP3.修正案を作成する
契約書の問題点やリスクの抽出ができたら、修正案を作成していきます。自社にとって不利な条項については、修正しなければなりません。自社にのみ義務が一方的に課せられていないかどうか。相手方だけが有利な条項になっていないかどうか、などをチェックします。
同時に、不正確な箇所がないかどうかもチェックすること。条件や期限、範囲などが曖昧になっていると、のちのちのトラブルにつながりかねません。双方にとってメリットがありませんので、不正確な箇所については、誤解やすれ違いが生まれないように、修正していくことが大切です。
もう一点、修正時にチェックしたいのが、誤字脱字です。契約内容の吟味に比べると、大した問題じゃないように思うかもしれませんが、「てにをは」一字で文章の意味が変わってくる場合もあります。「甲」と「乙」が逆になっていないかなど、ケアレスミスについてもしっかり確認して、修正するようにしましょう。
STEP4.修正案を確認する
法務部で修正案ができたら、現場の担当者とのすり合わせを行っていきます。契約書は法的な観点からのチェックだけではなく、契約に至った背景や、取引先の関係性を踏まえた上で、修正案が現実的なものになっているかを、確認する必要があります。相手と今後もよい関係性が築けるように、現場の担当者と意見交換をして、契約書の修正案を固めていきましょう。
ここまでの確認が終わったら、レビューの最後のフローとして「相手にとってわかりやすい修正になっているかどうか」をチェックします。修正の意図を、コメント欄やメールの本文などで記載しておくと、相手方も合意しやすいでしょう。
契約書レビューの重要性を社内で認識しよう
この記事では契約書レビューについて、具体的なフローについて解説しました。契約書の内容については、現場の担当者もしっかり把握しなければなりません。契約書レビューの方法も、法務部だけが知っておけばよいというものではなく、社内で共有しておくことが大切です。また、法務部のほうは、契約書レビューの重要性を社内で理解してもらえるように、ミーティングを行うなどして、働きかけを行っていくとよいでしょう。
OLGAの法務データ基盤モジュールでは、契約書のみならず、法律相談についても一元的に受付管理が可能です。
案件単位ですべての情報が蓄積できるので、業務の漏れを予防しながら、迅速に対応することができます。
詳しくは以下のサービス紹介をご覧ください。
法務案件の一元管理なら
事業部はメール/チャットのままで依頼・やりとりが可能な、
法務案件の受付一元化と蓄積・活用を実現する「OLGAの法務データ基盤モジュール」をご体験ください。