法務ナレッジマネジメントを行うためには適切な形でナレッジを蓄積していく必要があります。このページでは法務案件ナレッジの理想の型について解説をしています。

法務案件の特徴

まずは法務案件の3つの特徴について確認します。

複数関係者を巻き込んで処理に向かう

・依頼者、上長、法務主担当、法務上長、顧問弁護士、他部門など複数の関係者とのやり取りが発生する。

案件の単位が一つのドキュメントに固定化されない

・参考資料や主たる契約書等が複数存在する場合がある
・契約書等のバージョンがそれぞれ更新される
・法律相談の回答はドキュメントではなくメッセージである

別の業務プロセスの一部として法務案件化される

・法務確認前に商談や事業検討のプロセスがある
・法務確認後に承認稟議や締結のプロセスがある

過去案件の活用

過去の法務案件を活用するシーンは下記です。

  • 方針の一貫性を担保するために同じ取引先に対しての案件を確認
  • 同種の案件を参考にするために確認

一つ目の「同じ取引先に対しての案件」を確認することは、同じ取引先に対しての一貫した方針を担保するために重要です。原則として同じ方針を担保して行わないと、事業部が板挟みになってしまい、前回との違いの説明を求められることになります。

例外として、前回と明確に方針を変える理由がある場合は、その理由を説明しないといけないため、いずれにせよ同じ取引先に対し過去の案件を活用する必要性は高いでしょう。

二つ目の「同種の案件」を確認することは、組織内において同じ論点を複数検討することを避ける意味でも、業務の効率性や品質アップにとって非常に重要です。

法務案件は検討の抜け漏れが許されないケースも多いことから、時間と神経を使って検討した結果を再活用できる意義は非常に大きいです。特に費用を使った外部の弁護士の回答は、必ず同種の案件では活用すべきであり、複数回依頼することになると費用もかさみます。

「同種の案件」の判断も、最終版のドキュメントのみならず、そこに至る経緯等も確認しながら判断をしていくようになるため、どのような型で過去案件が蓄積されているかは非常に重要です。

法務ナレッジの理想の型

まずは取引先名で瞬時に検索できるように整理しておく必要はあります。

さらに法務案件を適切に活用するためには、最終版の契約書等のドキュメントだけでは不十分であり、場合によっては複数の契約書のバージョン管理、それらに紐付くコメント、参考資料や識別情報も含めた一種のパッケージとして集約されていることが非常に重要です。

また、法務案件は契約書業務に限られるものではないため、一般的な法律相談やコンプライアンス関連の業務も含めて整理する必要があります。

特に強調しておきたい点は、事業部門が法務部門に、最終的にはどのような形で案件が着地したかどうかを共有することです。最終着地についての共通認識がないと、法務部門は誤った形で事業の進捗を認識してしまうため、今後の法務案件について誤った対応をしてしまう可能性が高くなりますし、事業部門の理解も進んでいきません。

このような法務案件の特徴から、「ドキュメントは複数」「複数関係者のコメント」等も一緒にパッケージでまとめていくことが必要だと考えられます。

One Legal:法務案件ナレッジ理想の型とは?

契約書の場合

  • 契約書(初期バージョンから最終バージョンまで)
  • 契約書のバージョンに紐づいた関係者(法務担当者、事業部、他部門、顧問弁護士等)のコメント
  • 参考資料
  • 識別のための項目(どの部門からの依頼か、契約類型、顧問弁護士の回答の有無、日付等)

まず、契約書を扱う法務案件の場合は、ナレッジの核になるのは契約書そのものです。契約書の最終バージョンが最も重要なナレッジであることは間違いないですが、契約書と不可分一体である契約書の背景にある取引についてもセットで集積されていないと、字面だけの契約書では活用の段階で価値が半減してしまいます。

契約書の背景にある取引を表現するものは、
①事業部等からの依頼に至るコメントや付随情報
②初期から最終バージョンに至るまでの取引先のコメント
③事業部のコメント
等、契約書に付随する参考資料等が中心となります。

なお、取引基本契約書と秘密保持契約書のように、一つの取引を背景とした契約書が複数作成されることもあるため、契約書は一つに限りません。

また、ナレッジとしての活用価値を維持するためにも日付は必須です。法務案件は常に最新のものが蓄積されるため、陳腐化したナレッジによって価値あるナレッジも毀損してしまう恐れがあるため、区別のために日付の蓄積は必須のものとして行うべきでしょう。

さらにナレッジの活用価値を高めるために、識別情報を加えておくと良いでしょう。会社によりますが、どの部門からの依頼なのか、契約類型や立場、顧問弁護士のコメント有りかを識別情報として整理しておくと、参考になる情報かどうかの区別がすぐにつくようになるため、効果的です。

契約書以外の法務案件の場合

  • 依頼者からの質問事項と最終回答
  • 最終回答に至るまでの関係者(法務担当者、事業部、他部門、顧問弁護士等)のコメント
  • 参考資料
  • 識別のための項目(どの部門からの依頼か、関連法令、顧問弁護士の回答の有無、日付等)

契約書以外との法務案件は多岐に渡りますが、一般的な法律相談を念頭に置いて整理します。

最も重要なのは、依頼者からの質問事項と最終回答がセットで集積されていることです。可能であれば、質問事項をより明確にするための最終回答に至るまでの関係者のコメントや参考資料もセットであると良いでしょう。

日付という概念が必須なのは法律相談においても同様です。

識別のための項目も原則論は同様ですが、関連法令等をセットで集積しておくことで、ナレッジの活用価値が上がります。

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