法務コラム

Slack・スプレッドシートで法務案件・契約書管理を工夫し尽くす方法と、その限界

投稿日:2025.05.29

法務案件管理をSlackやスプレッドシートで行う中で、「依頼を見落としてしまいそう」「情報を探す時間が長すぎる」と感じる方は多いでしょう。Slackでのやり取りは手軽ですが、DMやチャンネル内で依頼が散在し、機密性や見落としのリスクが常に付きまといます。スプレッドシートへの手入力も手間がかかり、ミスや情報の属人化が避けられません。ただ、依頼テンプレートの定型化や入力規則の活用など、今すぐ取り入れられる工夫も存在します。

一方で、根本的な効率化を目指すなら、これらの限界を超える専用の管理システム導入も検討すべきでしょう。この記事では、Slack・スプレッドシートでの改善の余地と、その限界を解消する法務案件管理システム「OLGA」の活用法をご紹介します。

従来の法務案件管理フローの実態:Slackとスプレッドシートの組み合わせ

多くの企業で、Slackとスプレッドシート、そしてGoogle Driveなどのストレージサービスを組み合わせた法務案件管理が行われています。一見、手軽に始められるこの方法ですが、具体的にどのような流れで、どんな非効率やリスクが潜んでいるのでしょうか。

Slackでの依頼受付:見落とし・機密性・管理の壁

事業部からの法務相談や契約書レビュー依頼が、Slackの特定チャンネルや、時には担当者へのダイレクトメッセージ(DM)で送られてくるケースは多いでしょう。

  1. 依頼の見落としリスク:
    チャンネルには他の通知も流れてくるため、重要な依頼が埋もれてしまう可能性があります。DMでの依頼はさらに属人化しやすく、担当者不在時の対応漏れや、退職時の引き継ぎ漏れリスクを高めます。

  2. 機密情報のオープンな共有:
    チャンネルがオープンな設定の場合、契約内容などの機密情報を含むやり取りが、関係者以外にも閲覧可能な状態になってしまう可能性があります。

  3. 情報の散逸:
    依頼内容、関連資料、その後のやり取りがスレッドやDMに分散し、後から案件の全体像を把握するのが困難になります。

スプレッドシートでの手動台帳作成:手間・ミス・形骸化

  1. 転記作業の手間と時間:
    Slackの情報をコピー&ペーストし、必要な項目(依頼部署、依頼者、案件概要、期日など)を一つひとつ入力するのは、案件数が増えるほど大きな負担となります。

  2. 入力ミス・更新漏れ:
    手作業である以上、入力ミスや、ステータス変更などの更新漏れが発生するリスクは避けられません。不正確な情報は、誤った判断や対応遅延につながる可能性があります。

  3. フォーマットの不統一・形骸化:
    管理項目や入力ルールが担当者によって異なったり、忙しさから入力自体が形骸化したりするケースも見られます。

ファイル管理と情報検索の非効率:探すだけで一苦労

契約書や関連資料は、Google Driveや共有フォルダなどに格納されますが、ここにも課題があります。

  1. 情報の点在:
    依頼の経緯はSlack、案件のステータスはスプレッドシート、契約書ファイルはストレージ、と情報がバラバラに存在するため、一つの案件に関する情報を確認するのに複数のツールを横断する必要があります。

  2. 検索の困難さ:
    過去の類似案件や参照すべき契約書を探す際、Slackのメッセージ履歴、スプレッドシートの台帳、フォルダ構造をそれぞれ検索する必要があり、多大な時間と労力がかかります。「あの時の、あの案件の資料どこだっけ?」という経験は、多くの法務担当者が共感するのではないでしょうか。

ツールを変えずに最大限工夫する方法:現状のツールでもここまでできる

「理想はシステム導入だけど、今すぐには難しい…」そうお考えの法務担当者の方もいらっしゃるでしょう。現在のSlack、スプレッドシート、Google Driveといったツールの中でも、運用ルールを見直したり、機能を活用したりすることで、一定の効率化を図ることは可能です。ここでは、すぐに実践できる具体的な工夫をいくつかご紹介します。

Slackでの工夫:依頼フォーマットの定型化

依頼内容の抜け漏れを防ぎ、後続の処理をスムーズにするために、依頼時のフォーマットを定型化することが有効です。

  1. 必須項目の明確化:
    依頼テンプレートを作成し、「依頼種別(契約レビュー、法律相談など)」「契約相手方」「希望納期」「背景・目的」「関連資料の有無」といった必須項目を明記します。

  2. テンプレートの周知と徹底:
    作成したテンプレートを法務相談チャンネルのピン留めやトピックに設定し、事業部に利用を依頼します。最初は手間かもしれませんが、定着すれば依頼内容の確認の手間が大幅に削減されます。

  3. ワークフロー機能の活用:
    Slackのワークフロービルダーを使えば、定型的な依頼フォームを作成し、回答内容を特定のチャンネルに自動投稿したり、スプレッドシートに連携したりすることも可能です(ただし、設定やメンテナンスの手間はかかります)。

スプレッドシートでの工夫:入力支援と可視化によるミス防止・状況把握

スプレッドシートの機能を活用し、入力の手間を減らし、ミスを防ぎ、案件状況を把握しやすくする工夫です。

  1. 入力規則(プルダウンリスト):
    依頼種別、ステータス、担当者などの項目にプルダウンリストを設定することで、入力の揺れを防ぎ、選択するだけで入力できるようにします。

  2. 関数による自動計算・表示:
    期日までの残日数、対応完了までの日数などを関数で自動計算させたり、条件付き書式で期日が迫っている案件を目立たせたりすることで、状況把握を容易にします。

  3. 入力支援と管理項目の見直し:
    以下の表のように、管理項目を見直し、入力しやすい工夫を取り入れます。

管理項目例 工夫のポイント
受付番号 自動採番や連番入力機能で手間削減
依頼日 =TODAY()関数などで入力補助
依頼部署/依頼者 プルダウンリストで選択式に
案件種別 プルダウンリスト(契約レビュー、法律相談、登記関連など)
案件概要 簡潔に記載するルールを設ける
取引先 正式名称で記載するルールを設ける
契約書ファイル名 命名規則を決め、コピペで入力
ステータス プルダウンリスト(受付済、対応中、確認依頼中、完了など)
担当者 プルダウンリスト
希望納期 日付形式で入力
対応完了日 日付形式で入力
備考 特記事項を記載
関連Slackリンク 該当スレッドのリンクを貼る(手動)
関連資料リンク Google Driveなどのファイルリンクを貼る(手動)

 

Google Drive(ストレージ)での工夫:フォルダ構成・命名ルールの統一

後からファイルを探しやすくするため、フォルダ構成とファイル命名規則を統一し、チーム内で徹底することが重要です。

  1. フォルダ構成のルール化:
    例えば、「案件種別別」「依頼部署別」「年度別」など、自社に合ったルールでフォルダ階層を設計します。「案件管理番号」でフォルダを作成するのも有効です。

  2. ファイル命名規則の明確化:
    「日付_案件名_相手方_バージョン」のように、誰が見ても内容を推測できる命名規則を定めます。バージョン管理(例:_v1, _v2)も重要です。

  3. 定着のための工夫:
    ルールをドキュメント化し、チーム内で共有・レビューする機会を設けます。定期的に整理状況を確認することも有効です。

その他の工夫:検索ノウハウの共有と活用

SlackやGoogle Driveには検索機能がありますが、より効率的に目的の情報を見つけるためのノウハウをチーム内で共有することも大切です。

  1. 検索演算子の活用:
    from:@ユーザー名, in:#チャンネル名, has:link, before:日付, after:日付 などの検索演算子を活用するテクニックを共有します。

  2. 検索キーワードの工夫:
    案件名や相手方だけでなく、関連する可能性のあるキーワードで検索する習慣をつけます。

  3. ノウハウのドキュメント化:
    有効な検索方法や、特定の案件を探す際のコツなどを、チーム内の共有ドキュメントなどに蓄積していきます。

 

これらの工夫によって、現状のツールでもある程度の業務改善は期待できます。しかし、情報の分断(Slack、スプレッドシート、ストレージ間の連携不足)、手動作業の根本的な手間とリスク、そして知識やノウハウの属人化といった構造的な課題は依然として残ります。

より本質的な効率化とリスク低減を目指すには、これらの課題を根本から解決する仕組みが必要となるでしょう。

従来型フローの構造的な問題点/限界:なぜ工夫だけでは足りないのか

セクション2で紹介したような工夫を凝らしても、Slack、スプレッドシート、ストレージを組み合わせた従来の法務案件管理フローには、依然として克服が難しい構造的な問題点が存在します。これらの限界が、なぜ法務部門の生産性向上やリスク管理強化のボトルネックとなり、根本的な解決策としてのシステム導入が必要とされるのか、改めて深掘りしてみましょう。

情報の分断と検索非効率:探す時間が最大の無駄

最大の課題は、案件に関する情報が各ツールに散逸し、分断されている点です。

  1. 全体像の把握が困難:
    依頼の背景や経緯はSlackのスレッド、最新のステータスはスプレッドシート、契約書の最終版はGoogle Drive…と、一つの案件を把握するために複数のツールを確認し、頭の中で情報を繋ぎ合わせる必要があります。これは非常に非効率であり、認識漏れの原因にもなりかねません。

  2. 過去案件・ナレッジ検索の限界:
    過去の類似案件や参照すべき情報を探す際、各ツールを個別に検索する必要があり、多大な時間を要します。キーワードが曖昧だったり、ファイル名やフォルダ構成が不統一だったりすると、目的の情報にたどり着けないことも少なくありません。「あの時の判断根拠、どこかに書いてあったはずなのに…」と、貴重なナレッジが埋もれてしまうのです。

手作業依存による非効率とヒューマンエラーリスク:常に付きまとう不安

スプレッドシートへの手動転記や、各ツール間の情報連携を手作業で行うことには、常に非効率とリスクが伴います。

  1. 単純作業による時間浪費:
    依頼内容の転記、ステータス更新、ファイルリンクの貼り付けといった単純作業に、法務担当者の貴重な時間が奪われます。本来注力すべき高度な法的判断や戦略的な業務にかける時間が圧迫されてしまいます。

  2. ミス・抜け漏れの発生:
    手作業である以上、転記ミス、更新漏れ、リンクの貼り間違いといったヒューマンエラーを完全になくすことは困難です。これらのミスが、対応遅延、誤った情報に基づく判断、契約上のリスクにつながる可能性も否定できません。特に、担当者が多忙な時期や、複数の案件を並行して抱えている場合にリスクは高まります。

ナレッジ活用の障壁と属人化:組織としての成長を阻害

情報が分断し、検索性が低い状態は、法務部門全体のナレッジ活用を妨げ、業務の属人化を招きます。

  1. 暗黙知の共有困難:
    過去の案件対応で得られた知見やノウハウが、担当者の記憶や個人のファイル管理に依存しがちです。組織全体で共有・活用できる「形式知」として蓄積されにくいため、同じような調査や検討を別の担当者が繰り返してしまう非効率が生じます。

  2. 担当者不在時のブラックボックス化:
    特定の担当者しか案件の詳細や経緯を知らない、という状況が生まれやすくなります。担当者が休暇や異動、退職した場合、業務の引き継ぎが困難になったり、対応が滞ったりするリスクがあります。これは事業継続性の観点からも問題です

 

これらの構造的な問題点は、日々の運用改善や個々の担当者の努力だけでは、根本的な解決が難しいと言わざるを得ません。法務業務のDXを進め、真の効率化とリスク低減、そしてナレッジ活用による組織力向上を実現するためには、案件情報を一元的に管理し、プロセスを自動化できる仕組み、すなわち法務案件管理システムの導入が有効な選択肢となります。

法務DXの一手「OLGA」でSlack・スプレッドシート管理の限界を突破

ここまで見てきたように、Slackやスプレッドシートを用いた従来の法務案件管理は、手軽さゆえに広く普及しているものの、案件が増えるにつれて見落としリスク、情報の散逸、手入力によるミスや非効率が避けられなくなります。

「色々工夫してみたが、これ以上は難しい」

そう感じたときこそ、法務業務を抜本的に効率化する新しい方法を検討するタイミングです。 Slackともシームレスに連携し、法務案件を依頼受付から情報の保存・検索まで一元管理できるクラウド型法務案件管理システム「OLGA」をご紹介します。

事業部は日常的に使い慣れたSlackから簡単に依頼を出せ、法務部門はSlackからの情報転記やファイル整理の手間をかけずに、案件の全情報をOLGA上で自動的に整理・蓄積・活用できる環境が整います。

OLGAとは?

OLGAは、依頼受付から案件情報の保存・検索までを一元管理できるクラウド型の法務案件管理システムです。GVA TECHが提供しており、受け取った依頼を自動で案件台帳化し、関連するSlackでのコミュニケーション履歴やファイルを自動的に紐付けて管理。Slack・スプレッドシート・ファイルストレージをまたぐ煩雑な作業を一つのプラットフォームで完結できます。

OLGA導入の3大メリット

(1)案件台帳の自動作成

案件台帳を自動作成 事業部がSlackで依頼を投稿するだけで、案件管理台帳がOLGA上で自動的に作成・更新されます。スプレッドシートへの手作業での転記は一切不要。

 

(2) 契約書やSlackの自動蓄積

Slack履歴や契約書を自動で集約 Slackでのやり取りや契約書のファイルは、やり取りをするだけで自動的に案件ごとに紐付けて保存されます。過去のメッセージやファイルを探す手間がゼロになります。

(3) 高度な検索機能で過去案件もすぐ見つかる

高度な検索機能で必要な情報がすぐ見つかる 案件名はもちろん、契約書の内容やSlackのコミュニケーション履歴も全文検索可能。さらに案件の種類や担当者、ステータスなどでフィルタリングもできるため、ナレッジの活用が劇的に向上します

導入企業の声

株式会社コロプラ様

「法務部門は年間数万件の手動業務が0になり、事業部にもSlackから法務案件の依頼とやりとりが可能な点が好評です。」

事例をみる

株式会社識学様

「契約審査のリードタイムが25%削減!ログイン不要でSlackから返信可能な点がスピードアップのポイント」

事例をみる

まとめ:今こそ「脱Slack・脱スプレッドシート」のタイミング

本記事では、多くの企業で採用されているSlackとスプレッドシートを中心とした法務案件管理の現状と、そこに潜む課題、そして運用での工夫とその限界について解説してきました。

Slackやスプレッドシートを使った法務案件管理では、依頼の見落としリスクや情報散逸、手入力の非効率といった構造的な課題が避けられません。

法務案件管理システム「OLGA」は、これらの課題を根本的に解決するために開発されました。Slackからの依頼受付や台帳作成を自動化し、情報を一画面で一元管理できるため、作業負担とミスを劇的に削減。さらに、契約書やSlackのやり取りを含む高度な検索機能でナレッジ活用を促進し、法務部門が本来注力すべき戦略的業務への集中を可能にします。まずはOLGA導入による効果をぜひ体感してください。

 

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・この記事の著者・監修情報

山本 俊

GVA TECH株式会社 代表取締役
GVA法律事務所 創業者

山本 俊

弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立。
2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。AI法務アシスタント、法務データ基盤、AI契約レビュー、契約管理機能が搭載されている全社を支える法務OS「OLGA」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。

OLGAは
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