法務コラム

SharePointで法務案件・契約書管理を工夫し尽くす方法と、その限界

投稿日:2025.05.30

SharePointはファイル共有や情報共有に優れたツールですが、法務案件の管理に使用する際、「依頼情報の入力に時間がかかる」「必要な情報を探すのに手間取る」といった課題を感じている方も多いのではないでしょうか。もちろん、SharePointの機能を最大限に活用することで、ある程度の効率化は可能です。しかし、SharePointだけでは、法務案件管理における情報の一元管理や更なる効率化を実現するには限界があります。

本記事では、まずSharePointの標準機能を最大限に活用し、法務案件管理をどこまで効率化できるのか、その工夫の数々をご紹介します。しかし、それでもなお残るSharePointを用いた法務案件管理における課題と、その限界を解消するための法務案件管理システム「OLGA」の活用法をご紹介します。

従来の法務案件管理フローの実態:SharePointによる法務案件の管理とは?

多くの企業において、SharePointはその汎用性の高さから、ファイル共有や情報共有の基盤として広く利用されていますが、法務案件の管理においては、特有の課題が生じることがあります。ここでは、一般的なツールであるSharePointを用いた場合の法務案件管理の流れを詳細に見ていきましょう。

案件依頼・受付とSharePointへの転記

法務部門への案件依頼は、依然としてメール、社内申請フォーム、口頭など、多様な形式で行われているのが現状です。これらの依頼情報は、法務部門内で一元管理するために、最終的にSharePointに集約されることが多いです。

(1) 手作業による転記の負担

メールやチャットで送られてきた依頼内容を、法務担当者が一件一件確認し、SharePointのリストやドキュメントライブラリの適切な項目に手動で入力する作業は、想像以上に時間と労力を要します。案件名、依頼部署、担当者、期日、契約書の種類、契約金額、添付資料の有無、特記事項など、入力すべき項目は多岐にわたります。また、手作業である以上、入力ミスや転記漏れのリスクは常に伴い、後々の情報確認や修正の手間につながる可能性もあります。

(2) 情報の一元化の遅れ

依頼情報がSharePointに登録されるまでのタイムラグも無視できません。メールで依頼を受け付けた場合、担当者が内容を確認し、SharePointに転記するまでの間、法務部門内での情報共有は滞りがちです。この遅れは、初期対応の遅れ、担当者の割り当ての遅延、類似案件の確認漏れなど、様々な問題を引き起こす可能性があります。また、口頭での依頼の場合、後からSharePointに情報を登録する際に、聞き間違いや認識の齟齬が生じるリスクも考えられます。

SharePointでの案件フォルダ作成とファイル格納

案件ごとに、関連する契約書、議事録、社内資料、関連法規の調査結果などをSharePointの特定のフォルダに格納して管理することは、一見すると理にかなっています。しかし、案件数の増加とともに、その管理の複雑さが増していくのが現実です。

(1) 煩雑なフォルダ作成と管理

新しい案件が発生するたびに、法務担当者が手動でSharePoint上に案件専用のフォルダを作成し、関連ファイルをアップロードする必要があります。フォルダの命名規則が統一されていなかったり、担当者によって管理方法が異なると、SharePointのフォルダ構成はすぐに複雑化してしまいます。フォルダの階層が深くなりすぎると、目的のファイルにたどり着くまでに何度もクリックを繰り返す必要があり、大きなストレスとなります。

(2) バージョン管理の課題

契約書の修正履歴など、重要なファイルのバージョン管理をSharePointの標準機能で行う場合、どのバージョンが最新なのか、過去のどの時点の契約書が有効だったのかを正確に把握することが難しくなることがあります。誤って古いバージョンの契約書を参照してしまったり、最新版がどこにあるのか分からずに無駄な修正作業を繰り返してしまうリスクも考えられます。法務業務においては、契約書の正確なバージョン管理は非常に重要であり、その不備は重大な問題につながる可能性があります。

案件情報の検索と過去事例の参照

過去の類似案件や関連資料は、法務判断の重要な参考情報となります。しかし、SharePointでこれらの情報を効率的に検索することは、必ずしも容易ではありません。

(1) 検索精度の限界

SharePointの検索機能は、ファイル名やドキュメント内のキーワードに完全一致するファイルを検索することには比較的優れています。しかし、曖昧なキーワードでの検索や、関連性の高い情報を横断的に検索することは苦手とする場合があります。契約書の条項内容や、過去の法務判断の経緯など、ファイルの中身全体を理解した上での高度な検索は困難です。必要な情報にたどり着くまでに多くの時間を費やしてしまうことは、法務担当者の生産性を大きく損なう要因となります。

(2) ナレッジの活用が進まない

過去の案件情報や対応履歴が、担当者個人のSharePointフォルダやローカルファイルに散在している場合、組織全体の貴重なナレッジとして活用することが極めて困難になります。特定の担当者しか知らない過去の判例や対応のノウハウは、その担当者が不在になったり異動したりすると、組織から失われてしまう可能性があります。法務部門全体の知識や経験を共有し、組織力を高めていくためには、過去の案件情報を一元的に管理し、誰もが容易にアクセスできる仕組みが必要です。

ツールを変えずに最大限工夫する方法:SharePointでもここまでできる

「新しいシステムを導入するには、時間もコストもかかるし、なかなかハードルが高い…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、システム導入は慎重に進めるべき検討事項です。そこで、現在お使いのSharePointの機能を最大限に活用し、他のツールとの連携を工夫することで、ある程度の業務効率化を図ることは可能です。ここでは、今日からでも実践できる具体的な工夫をいくつかご紹介します。

Microsoft Teamsとの連携:依頼・報告の効率化

法務部門への案件依頼や進捗報告のコミュニケーションを、従来のメール中心からMicrosoft Teamsのチャネルに移行することで、情報共有の効率性を高めることができます。

(1) 依頼フォーマットの定型化

Teamsの投稿機能やOneNoteとの連携を活用して、法務依頼に必要な情報を明確にする定型フォーマットを作成しましょう。依頼者はこのフォーマットに沿って入力するだけで、法務担当者は必要な情報を漏れなく受け取ることができ、スムーズに案件に着手できます。また、依頼内容が構造化されることで、後のSharePointへの転記作業の効率化にもつながります。

(2) 進捗報告の定期化

案件の進捗状況に関する報告の頻度や報告内容をルール化し、Teamsのチャネルで定期的に共有するようにしましょう。例えば、週に一度、担当者と進捗状況、今後の予定などを簡潔に報告する形式を定めます。これにより、関係者全員が最新の状況をリアルタイムに把握でき、進捗の遅れや問題点を早期に発見しやすくなります。また、報告履歴がチャネルに残るため、後から状況を振り返る際にも便利です。

Excelとの連携:案件リストの作成と管理

SharePointのリスト機能に加えて、Excelを連携させることで、案件の進捗状況、担当者、期日などを一覧で管理し、視覚的に分かりやすくすることができます。

(1) 入力規則と関数

Excelの入力規則を活用して、ステータス項目(未着手、対応中、完了など)をドロップダウンリストから選択できるようにしたり、担当者名をプルダウンメニューから選択できるようにすることで、入力ミスを減らすことができます。また、関数を活用することで、ステータスごとの件数を自動集計したり、期日超過のアラートを条件付き書式で表示させたりするなど、効率的な管理体制を構築することが可能です。

項目 具体的な工夫
ステータス ドロップダウンリストで「未着手」「対応中」「完了」などを選択式にする
担当者 担当者名をドロップダウンリストから選択できるようにする
期日 カレンダーで日付を選択できるようにし、条件付き書式で期日超過のアラートを表示する
進捗率 スライダーやパーセント表示で進捗状況を可視化する
完了日 案件完了日を自動入力する関数を設定する
備考 テキスト形式で詳細な情報を記録できるようにする

OneDriveとの連携:ファイル管理の整理

SharePointとOneDriveを連携させることで、個人が作成・編集する作業中のファイルは一旦OneDriveで管理し、共有が必要になった段階でSharePointの適切なフォルダに移動させるという役割分担を明確にすることができます。

(1) 明確なフォルダ構成と命名規則

OneDrive内に、案件の種類(契約書、訴訟、相談など)や年度などに基づいた明確なフォルダ構成を作成し、ファイル名には「契約締結日_契約当事者名_契約種類_バージョン番号」のように規則性を持たせることで、ファイルの検索性と管理効率を向上させます。これにより、個人の作業領域が整理され、誤って共有前のファイルをSharePointにアップロードしてしまうリスクを減らすことができます。

(2) ショートカットの活用

頻繁にアクセスするSharePointの特定のフォルダやファイルは、OneDriveにショートカットを作成しておくことで、エクスプローラー上から素早くアクセスできるようになります。これにより、SharePointの複雑な階層を辿る手間を省き、業務効率を向上させることができます。

SharePointの検索機能の活用:検索性の向上

SharePointの標準検索機能も、いくつかの工夫を加えることで、その検索精度を向上させることができます。

(1) キーワードの工夫

曖昧なキーワードだけでなく、複数のキーワードをAND検索(スペースで区切る)、OR検索(ORを入力)、NOT検索(-を入力)などを組み合わせたり、完全一致検索(””でキーワードを囲む)を活用したりすることで、より的確な検索結果を得られる可能性が高まります。例えば、「秘密保持契約 AND 2024年 -人事」のように、複数の条件を組み合わせることで、目的のファイルを絞り込むことができます。

(2) 絞り込み機能の活用

検索結果が表示された後、左側のナビゲーションパネルに表示されるファイルの種類、更新日、作成者、コンテンツタイプなどの絞り込み条件を活用することで、さらに目的のファイルを見つけやすくなります。例えば、契約書だけを表示したい場合は、ファイルの種類で「ドキュメント」を選択し、特定の期間に作成されたファイルを探したい場合は、更新日で期間を指定することができます。

これらの工夫によって、SharePointを用いた法務案件管理でもある程度の業務効率化は期待できます。しかし、情報の分散、手動作業の負担、担当者による管理方法のばらつきといった構造的な課題は依然として残ります。これらの根本的な課題を解決し、より高度な法務案件管理体制を構築するためには、法務業務に特化したシステムの導入を真剣に検討する必要があるでしょう。

従来型フローの構造的な問題点と限界

セクション2では、SharePointを最大限に活用するための様々な工夫をご紹介しましたが、それでもなお、従来の管理方法にはいくつかの根深い構造的な問題点と、SharePointのような汎用ツールではどうしても乗り越えられない限界が存在します。これらの限界こそが、なぜ法務担当者の皆様が日々の業務の中で非効率や煩雑さを感じ、根本的な解決策を必要としているのか、その理由を明確にしていきます。

案件台帳作成の手間と入力ミス

従来、法務案件の依頼は事業部からメール、社内申請フォーム、あるいは口頭といった様々なルートで法務部門に届きます。これらの依頼情報を、法務担当者が一件一件確認し、SharePointやExcelといったツールを用いて案件台帳に手動で転記する必要があります。案件によっては転記する項目は10項目を超える場合もあります。この手作業による転記作業は膨大な時間と労力を奪う大きな負担となります。

さらに、手作業での転記作業は、どうしても入力ミスや転記漏れのリスクを伴います。人為的なミスを完全に防ぐことは難しく、常に潜在的なリスクを抱えながら業務を進めることになります。

契約書のバージョン管理と保存の手間

法務案件においては、契約書の作成・レビューの過程で、事業部や取引先との間で何度も修正や調整が行われることが一般的です。その都度、法務担当者は修正された契約書をダウンロードし、ファイル名に「_v2」「_修正版」「_最終」といったバージョン情報を手動で付与してSharePointの案件フォルダに格納するという作業が発生します。1つの案件で複数回のやり取りが行われる場合、1つの案件で数回、年間で数百、数千件ものファイルを格納する必要があり、これは非常に手間のかかる作業です。

過去案件の検索性の悪さ

過去の類似案件や関連資料は、新規案件の対応方針を決定したり、契約書の条項を作成する際の重要な参考情報となります。しかし、SharePointを用いた従来の管理方法では、これらの情報を効率的に検索することが非常に困難です。案件情報はSharePointのリストに、契約書や関連資料は案件ごとのフォルダに、そして過去のやり取りに関するメールはメールフォルダに、といった具合に情報が複数の場所に分散して保存されているため、必要な情報を探し出すためには、これらの複数の場所を横断的に検索する必要があります。

セクション2でご紹介したようなSharePointの検索方法を駆使したとしても、キーワードに完全一致するファイルしかヒットしなかったり、関連性の低い情報まで大量に検索結果に表示されたりすることが多く、本当に必要な情報にたどり着くまでに多くの時間を費やしてしまうことになります。

法務DXの一手「OLGA」でSharePointによる法務案件管理の限界を突破

ここまで見てきたように、SharePointによる法務案件管理は、多くの企業が利用するMicrosoft社製のツールであるため、全社的なツールになりやすく広く普及しているものの、案件が増えるにつれて見落としリスク、情報の散逸、手入力によるミスや非効率が避けられなくなります。

「色々工夫してみたが、これ以上は難しい」

そう感じたときこそ、法務業務を抜本的に効率化する新しい方法を検討するタイミングです。 法務案件を依頼受付から情報の保存・検索まで一元管理できるクラウド型法務案件管理システム「OLGA」をご紹介します。

案件台帳作成の自動化

OLGAがSharePointによる管理と比較して圧倒的な優位性を持つ点の一つが、案件台帳作成の自動化機能です。事業部の担当者は、OLGA上に用意された専用の依頼フォームから案件情報を入力するだけで、その内容が自動的にOLGAの案件台帳に登録されます。この依頼フォームは、企業ごとの法務案件の特性に合わせて柔軟にカスタマイズすることが可能です。例えば、契約書の種類、契約金額、関連会社、緊急度など、法務部門が必要とする情報を漏れなく取得できるように設計できます。

契約書等の自動整理・一元管理

OLGAでは、事業部とのやり取りをするだけで、案件ごとに情報が自動で整理・蓄積されます。従来、管理に苦心していた案件情報、契約書の全バージョン、やりとりの内容などがOLGAでは全て一画面で格納されるため、契約書のバージョン管理やファイルの保存作業が不要になります。これにより、ファイル管理にかかる手間を大幅に削減し、情報の一元管理を実現します。

高度な検索機能による効率的な情報検索

OLGAは、案件単位でのキーワード検索や、台帳項目による絞り込みなど、高度な検索機能を備えています。台帳項目、契約書の本文、メールの内容もすべてキーワード検索でヒットするため、必要な情報を迅速かつ効率的に見つけ出すことができます。これにより、過去の案件を検索する時間を大幅に短縮し、業務効率を向上させます。

導入企業の声

郵船ロジスティクス株式会社様

 

「毎日1時間半かかっていた案件受付業務がゼロに。類似案件の検索やノウハウ共有がスムーズになり、業務キャパシティが飛躍的に向上しました。」

事例をみる

株式会社エムティーアイ様

 

「年間1万件のExcel転記・ファイル格納がゼロに。検索・分析の効率が圧倒的に改善されました。」

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まとめ:法務案件管理の効率化を実現するならOLGA

SharePointを用いた従来の法務案件管理では、案件台帳の手動作成、契約書の煩雑なバージョン管理、過去案件の検索性の悪さなどが課題となっていました。これらの課題は、法務担当者の業務効率を低下させるだけでなく、入力ミスや情報共有の遅延などのリスクも引き起こします。

OLGAは、これらの課題を解決し、法務業務の効率化と高度化を実現する法務案件管理システムです。OLGAを導入することで、案件台帳作成の手間をなくし、契約書等を自動で整理・一元管理し、高度な検索機能で必要な情報を迅速に見つけ出すことができます。

実際に、OLGAの導入により、案件受付業務の時間がゼロになったり、年間数万件の案件台帳への転記・ファイル格納の工数がゼロになったという事例も報告されています。

法務案件管理の効率化を実現し、法務担当者がより戦略的な業務に集中できる環境を構築するために、ぜひOLGAの導入をご検討ください。

 

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・この記事の著者・監修情報

山本 俊

GVA TECH株式会社 代表取締役
GVA法律事務所 創業者

山本 俊

弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立。
2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。AI法務アシスタント、法務データ基盤、AI契約レビュー、契約管理機能が搭載されている全社を支える法務OS「OLGA」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。

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