契約審査やコンプライアンスの推進など、幅広い業務を担当する企業法務。しかし、法務の人員が限られており目の前の仕事を処理することに手一杯であったり、業務効率化を推進できなかったりと、様々な課題に直面しているケースがよく見られます。
ここでは、法務の課題を「人材」「業務」「環境」という3つの側面から洗い出し、それぞれの解決策や改善すべきポイントについて解説します。
人材に関する課題と解決策
まずは、人材としての法務に関する課題と解決策についてまとめていきます。企業法務は専門的な業務を司る存在だからこそ、人材不足に端を発する課題が顕著です。
課題1:法務の人材不足
法律という専門的な知識を要する法務の仕事は、すぐにはできません。そのため、特に中小企業のように規模の大きくない会社の場合、法務担当者が企業内に一人しかいない「一人法務」と呼ばれる状態になっているケースも少なくありません。
また場合によっては、法務担当者が経理や労務といったその他の職種を兼務している場合もあります。そのような状態だと、法務の業務範囲が限定的になってしまったり、マンパワー不足による負担増などの悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
課題2:評価されにくい
法務の仕事は、どちらかといえばトラブル時の対応や予防といった「守り」の要素が多くなりがちです。さらに営業職や技術職のように、目に見える成果というのも出しにくい仕事であるため、正当な評価を受けにくいケースがあります。
また、一人法務の状態では、自己評価が必要になることもあります。評価者となる人物が法務の仕事に詳しくなかったりといったことも。正当な評価を受けられないままでいると、キャリアステップややりがいなど、さまざまな面で苦労を強いられてしまうでしょう。
解決策1:ツールなどを駆使して作業効率UP
法務の人材不足により、個人に掛かる負担が大きくなっている場合は、最新のツールを導入することによって、作業効率向上を図るのが効果的です。
効率改善のためのツールにはさまざまな種類があり、また近年では法務データ基盤システムのような法務業務に最適なツールも登場しています。細かな案件管理やデータの分析など、探したり調べたりする手間が掛かりやすい作業を、ツール導入によって効率化すれば、業務環境を大きく改善することも不可能ではありません。
解決策2:採用活動を強化する
採用活動を強化し、法務人材を充実させるという手法も、単純ながら効果的です。法律に関する知識や経験は、会社や事業が変わっても活かしていけるものですから、即戦力として法務経験者を採用すれば、自社にとって大きなメリットとなるでしょう。
しかし当然のことながら、そうした貴重な人材は市場価値が高く、どの企業も同様に欲しがる存在ではあるため、魅力的な待遇を用意しておくことが必要不可欠。採用に掛かる予算は高額になりがちなので注意しましょう。
また即効性はありませんが、新卒採用によって法務候補者を募集し、育てていくのもおすすめの手法です。定期的に法務を新卒採用していけば、法務人材が枯渇しない良い循環を作っていくことが可能です。
解決策3:評価制度を見直す
法務を含む事務系職種は、成果の見え方や成果に対する向き合い方が他の職種とは異なるため、専用の評価制度を設けるようにしましょう。正しい評価制度の整備は、担当者のモチベーションアップにも繋がり、企業全体にメリットをもたらします。
またそれに合わせて、評価者となる上司や役員といった、マネジメント層への教育も徹底するようにしてください。努力が適切に評価される環境を作ることが重要です。
業務に関する課題と解決策
続いて、法務の業務に関する課題を紹介していきます。企業内でも専門的な役割を果たす法務が、業務で存在感を発揮するためにはどのようにすればよいのでしょうか。
課題1:受け身の仕事になっている
契約審査や法律相談など、他部門から依頼や相談を受けたら回答するという受け身の仕事が中心となってしまう法務は多いようです。
また、法務自身が専門性を発揮するのではなく、弁護士に取り次いでもらうための部門という印象を他部門から抱かれてしまうケースもよくあります。受け身になりすぎると、企業内における法務の存在感は薄まってしまいます。
課題2:相談しづらいと思われている
法務の仕事内容は多岐にわたるため、他部門からは何の仕事をしているのか分かりづらい上に、専門性が高いため何となく「気難しい」というイメージを持たれやすいものです。
また、契約や新規事業展開などにおいて法的な観点からアドバイスすることにより、ビジネスストッパーのような立ち位置になりがちで、面倒くさい存在だと思われやすいのも法務の課題です。
課題3:コストセンターだと思われている
法務は業務の性質上、利益を生み出す部門ではなく、コストセンターだと経営層に認識されてしまうケースが多いです。そのため、人材採用や業務効率化ツールの導入といった投資が後回しになりがちで、業務環境が改善されづらいという課題があります。
解決策1:戦略法務に取り組む
企業内で法務の存在感を高めるためには、受け身の業務だけでなく、攻めの業務にも積極的に取り組むことが求められます。リスク回避のための予防法務はもちろんのこと、新規事業や海外展開などにおいてビジネスの意思決定に関与し、事業発展に貢献する戦略法務にもチャレンジする事も重要です。そのためにも、日々の勉強を通して法務自身の専門性をさらに磨き、法律関係のプロフェッショナルとして頼られる存在になることを目指しましょう。
解決策2:他部門とのコミュニケーションを強化
「気難しそう」「相談しづらい」というイメージを他部門に持たれてしまうと、法務に情報が集まらず、法的なリスクを増大させてしまう恐れがあります。そのような事態を回避し、何かあったらすぐ相談してもらえる存在になるためにも、日頃から他部門と積極的に交流を図り、コミュニケーションを強化することをおすすめします。
手近なところでは「!」や絵文字を使ったテキストコミュニケーションで、堅苦しい印象を払拭してみましょう。また、単なるビジネスストッパーとなってしまわないよう、「こうすれば法的に問題がなくなるかもしれません」「これに関しては●●部の〇〇さんに相談してみましょう」といったように、プラスアルファの情報を提供するなど、協力的なコミュニケーションを意識するのが良いでしょう。
法務データ基盤システムなどのツールを導入し、コミュニケーションコストを下げることも、他部門との関係性強化に役立ちます。
解決策3:中長期的な投資のメリットを示す
人材採用やツール導入などによる業務環境の改善や効率化を目指す場合は、中長期的な投資のメリットをロジカルに提示し、経営層を説得しましょう。
法務の機能が不十分になると、企業の信用力低下やブランド毀損といった事態にもつながりかねません。単なるコストセンターではなく、企業にとって重要な役割を果たしている部門であることをアピールするためにも、日々の業務で存在感を発揮しましょう。
環境に関する課題と解決策
最後に、法務が置かれている環境に関する課題と解決策について見ていきましょう。専門的な仕事だからこその課題が少なくありません。
課題1:テレワークができない
法務の仕事は紙の契約書や書類でのやり取りが必要なものや、捺印のような作業が必要なものが多く、さらに重要書類によっては社外持ち出しが禁止されているなど、テレワークによって対応できない仕事が少なくありません。こうした環境は、法務だからこそ直面する課題と言えるでしょう。
課題2:案件管理のコストがかかる
法務は相談窓口的な役割も担いますが、日々さまざまな部門から相談が寄せられたり、中には情報が不十分な相談が寄せられたりすることで、必要以上のやり取りを強いられているケースが少なくありません。加えて、契約書のやり取りなどでは、長期間にわたって調整を進める必要があるなど、手離れの良くない仕事も多いため、案件管理のコストが掛かりがちになっています。
解決策1:ペーパーレス化を推進
テレワークができないといった法務ならではの課題は、契約文書のデジタル化やペーパーレス化を推進していくことで、改善や解決に向かわせることが可能です。デジタル化を推進できる各種ツールやサービスを積極的に導入していくことで、ペーパーレス化を実現しましょう。
解決策2:ツールやフォーマットを導入して効率化
案件管理のコストについては、上でも解説した法務データ基盤システムのようなツールを導入することで、大幅に改善させることができます。また各部門からの相談に関しては、相談用のフォーマットを用意し、必要事項を漏らさず記載してもらえるようにすれば、コミュニケーションコストを下げることができるでしょう。
業務効率化で法務の存在感を高める
法務の課題とその解決策について解説してきました。企業内での法務の存在感を高め、企業経営により貢献するためには、日頃のコミュニケーションの工夫や業務効率化が欠かせません。
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