ビジネスを行うにあたっては、法律的な知識に基づいた判断が必要となるシチュエーションが数多くあります。そんな時に、あらゆる部署から頼りにされるのが、法務部です。法務部が寄せられた相談に対して回答を行う際には、どんな点が重要なのでしょうか。この記事では、そのポイントや手順について解説を行います。

法務相談と言っても実際の相談内容は様々

一口に法務相談といっても、その相手も内容も多岐に渡ります。例えば、事業部、管理部門、経営陣など、様々な立場のビジネスパーソンから、一見、法務マターではないようなものも含めて、多種多様な相談を受けることになるでしょう。

従業員の労働環境に関するものだと、従業員との労働契約に関するトラブルや労働時間や賃金に関する疑問などの「労務・労働問題」や、労働時間が正しく計算されずに適切な残業代が支給されていないといった「残業代トラブル」。

社内トラブルだと、不正な費用請求、資金流出などの「業務上横領」や他部署における意見の対立やコミュニケーションの問題を解決する「問題社員・モンスター社員対応」。

社外との取引に関わるものでは、金銭を貸し倒れた場合や、契約違反に対応する「債権回収」や、新規取引先との契約書の作成や既存契約の内容の確認などの「契約書作成・リーガルチェック」。

顧客対応としては、商品の品質に関するお問い合わせや、サービスの提供に関するご意見などの「クレーム対応」。

社内システムや資産に関する、社内のシステムがエラーを起こしたり、セキュリティに関する不安が生じたりした際の「IT(インターネット)関連」や、賃貸契約に関する問題や土地の所有権に関する疑義などの「不動産トラブル」。

知的財産に関する権利侵害に対応するための、インターネット上での名誉毀損やプライバシー侵害など「誹謗中傷」や著作権を侵害された場合に、適切な賠償請求や損害賠償の交渉を行う「著作権」、自社の商標が無断で使用されたり、模倣されたりするなどの問題に対応する「商標権侵害」。

さらに、フランチャイズ契約の解釈や違反に関するご相談などの「フランチャイズ関連」、新しいビジネスモデルを展開する際の法的なリスクや、契約書の作成、知的財産権の保護など、幅広いトピックがある「ベンチャー・  スタートアップ法務」や、企業が経済的な困難に直面し、経営状況が悪化したり、債務超過に陥ったりする場合の「法人破産(会社破産)」などがあります。

法務相談における法務の役割とは

法務に関する相談に対して、確かな法的な知識に基づいて回答していくことになります。ここからは、その際に注意すべきポイントをご紹介します。

1.客観的で根拠のある回答を行う

法務に関する相談に対して、「~と思います」といったような主観的な回答はせず、どの法令の、どんな条文に基づいているのかを明示しながら、客観的な回答を行うようにしましょう。

例えば、労働時間の適正な管理について相談を受けた場合は、労働基準法第36条に基づき、週40時間を超える労働時間は法的に認められません。ただし、特定の業種や職種には例外が存在する場合があるため、自社の事業を考慮して回答を行うとよいでしょう。

2.案件を進めるかの判断は行わない

法務に関する相談では、案件の進行可否の判断を基本的には行わないようにしましょう。相談の中で、まれに法務部門に対して「案件を進めてもよいかどうか」という判断を求められることがあります。しかし、案件に対する判断は、原則的には事業部のビジネスオーナーが行うべきです。責任の所在を明確にするためにも、案件の進行可否の判断は「法務部の役割ではない」ということをしっかりと伝えましょう。

3.質の高い回答ができるように事例を積み上げる

相談された分野について、これまで多くの経験を積んでいたり、すでに社内で事例が積みあがっていたりする場合は、経験や蓄積されたデータに基づいた踏み込んだ回答を行ってもよいでしょう。質の高い回答を目指して、社内データベースなどを活用し普段から経験したことや過去の事例を集積しておきましょう。

法務相談の対応手順

社内の様々な部署から寄せられる法務相談に対して、手順を追って回答しておくことをおすすめします。回答の際には、以下のようなステップを意識するようにしましょう。

STEP1:相談者にゴールを確認する

まず、法務相談において大切なことは、相談者のゴールをしっかりと確認することです。まずは、法務相談を通じて実現したいことは何なのかを相談者に確認することが第一歩となります。

例えば、最終的には紛争を解決したいのか、契約書を作成したいのか、あるいは法的リスクを回避したいのか、など、具体的な目標を明確にすることが重要です。

STEP2:調査を行う

相談者にゴールを確認した後は、詳細な調査を行います。個別具体的な相談内容をもとに、法律専門書などの文献を参考にして調査を行いましょう。例えば、以前の類似の事件や判例などの事例を検討することで、相談者に対しより明確なアドバイスを提供できます。

STEP3:専門家への依頼が必要か判断する

調査を行った結果、法的リスクや問題がある場合には、他の専門家の協力が必要かどうかを判断しなければいけません。調査の結果、法務部門と社内で連携可能な人材で対応することが難しいと判断した場合、他の専門家への相談が必要になります。

具体的な事例を挙げると、ある顧客が法的なトラブルの相談を法務部門に問い合わせた場合、もし顧客の問題が特許に関連していれば弁理士に相談する必要があります。また、不動産の契約トラブルについては、司法書士の助けを借りることも考えられます。自分だけで解決できる相談かどうかを判断し、必要に応じてスピーディーに行動を起こすことが重要です。

STEP4:場合によって次善策の検討を行う

相談を受けた法務部門の担当者が、自身で調査したり他の専門家に相談したりした結果、相談者が期待したゴールに至らない場合があります。このような場合には、他のビジネススキームを考えて提案するなど、次善策を相談者と一緒に考えていきましょう。

STEP5:相談内容と対応を記録に残して共有する

相談された内容と対応については、しっかりと記録に残し、あとで類似の相談があった場合に、無駄なく最適な回答ができるようにしておきましょう。他の専門家に相談した場合は、もらったメールをPDFやテキストファイルとして保存して法務の共有フォルダに入れておきます。こうすることで、法務部門のメンバーと案件の進捗状況を共有し、社内のデータベースとして蓄積することができます。

法務部として過不足のない回答を目指す

法務部門に寄せられる相談に対し適切に対応するためには、様々な部門が直面している課題に対し法律的な見地に立った客観的な回答を行うことが重要です。

例えば、契約書の解釈についての相談があった場合には、関連する判例や法律の解釈を調査し、相談者に最適な解決策を提案します。また、労働問題に関する相談があった際には、労働基準法や労働契約の条項などを照らし合わせ、相談者に適切な労働条件をアドバイスします。

そして、このような相談事例に関するデータを1箇所に集積すれば、法務担当者はいつでも過去の事例を参照し、相談者に対してより実態に即した回答を行うことができます。事例を集積することで、法務部として、常に最適なアドバイスを提供できるようにしましょう。

また、近年ではITなどのテクノロジーを活用することで、法務相談の受付から対応までをオンライン上で行い時間とコストの削減を実現することができます。さらに、専用のアプリケーションを活用することで、相談内容を一元管理し、スムーズな情報共有を実現することも可能になりました。

今後もテクノロジーの進歩によって、さらなる品質向上とスピーディな対応が実現するはずです。

法務案件の一元管理とデータ分析なら、ぜひGVAmanageをご活用ください。案件単位ですべての情報が蓄積できます。工数もかからずに導入が可能です。

詳しくはサービス紹介をご覧ください。

法務案件の一元管理なら

事業部はメール/チャットのままで依頼・やりとりが可能な、
法務案件の受付一元化と蓄積・活用を実現する「GVA manage」をご体験ください。

実現を後押しする法務DXクラウド
デモ画面