法務コラム

イノベーションを止めないための法務戦略と規制戦略とは?〜宇宙輸送×デジタル医療×法務省担当者の視点で考える、スタートアップが知るべき規制との向き合い方〜

投稿日:2025.05.21

1. 前例なき挑戦のための規制戦略について

前人未到の領域に踏み出すとき、避けて通れないのが「規制の壁」です。
キュアアップ代表取締役 佐竹様は、医師が処方する「治療アプリ」という新たな医療の形を切り拓いてこられました。従来の医薬品や医療機器とは異なるソフトウェアを規制庁がどう評価し、保険適用にまで繋げるかという壮大な挑戦でした。

佐竹様が強調されたのは、公衆衛生という観点から規制を行う当局(厚生労働省)が何を大切にしているのかを徹底的に理解し、「土俵を合わせた」対話を進める重要性です。

一方、将来宇宙輸送システムの代表取締役畑田様は、経済産業省時代に「宇宙活動法」の制定に携わった経験をお持ちです。
宇宙開発は、法整備が先行することで民間企業の参入を促し、新たな産業を創出するという側面があります。畑田様は現在、民間企業の立場から、有人宇宙飛行などを見据えた法改正を働きかけており、まさにルールメイキングの当事者としての視点を提供されました。

両氏のお話からは、規制といっても性質は様々(実際に両氏が対面する法規制は真逆の性質を持っているとさえいえます)で、その性質を見極め、粘り強くコミュニケーションを図ることの重要性が浮き彫りになりました。

 

2. リーガルリスクはビジネスリスク!守りから攻めへ転じる法務戦略

「リーガルリスク」と聞くと、どうしてもネガティブなイメージが先行しがちですが、本セッションでは、それを事業成長の糧に変えるためのヒントが満載でした。

将来宇宙輸送システムの畑田様は、リーガルリスクを「ビジネスリスクそのもの」と指摘。テクニカルな法律の条文解釈に終始してはいけない。その法律が何を守ろうとしているのか、法の目的(法益)を深く理解し、自分たちの事業がそれに反せず適合していることをベースとするコミュニケーションが肝要だと説きます。

また、法令上の論点解決を法律の専門家に丸投げするのではなく、まずは自社でリスクの所在を特定し、論点を絞って相談することで、より的確なアドバイスを引き出せるとの経験談は、多くの企業にとって示唆に富むものでしょう。

キュアアップの佐竹様も、自社の事業フェーズや専門分野(医療、特許、個人情報保護など)に応じて、最適な弁護士や法律事務所を戦略的に活用されている実情を語られました。

3. スタートアップが知るべき弁護士との関わりと未来への提言

イノベーションを目指すスタートアップにとって、弁護士はどのような存在であるべきでしょうか。

法務省の加藤様からは、従来の「紛争が起きてから相談する相手」というイメージから脱却し、弁護士が「経営者のビジョンを理解し、共に事業を前に進めるパートナー」へと役割を変えつつある現状が語られました。事実、法務省の調査ではアンケートに回答したスタートアップの約9割が弁護士を利用したことがあるというデータも示され、その重要性は論を俟ちません。

若き起業家へのアドバイスとして、キュアアップ佐竹様は「最初はリーガルリスクを気にしすぎず、世のため人のためという情熱を大切に。会社を起業してから向き合えばいい」とエールを送り、畑田様は「起業はあくまで手段。本当にやりたいことのために、あらゆる準備を怠らないこと」と、現実的な視点も提示されました。

法や規制は、イノベーションの障壁となることもあるが、事業の持続可能性を高め、社会からの信頼を得るための羅針盤となり得ます。そのためにも、信頼できる弁護士を早期に見つけ、良き相談相手として伴走してもらうことの価値を再認識させられる提言でした。

 

いかがでしたでしょうか。本セッションでは、規制との向き合い方から、具体的な法務戦略、そしてこれからの起業家へのメッセージまで、示唆に富んだ議論が展開されました。

このレポートが、皆様のビジネスの一助となれば幸いです。

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https://gvamanage.com/seminar/startup-legal-conference-03

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