技術の進歩に伴い、さまざまな業界でITサービスやシステムが導入されるようになることで、そのニーズを拡大している職種の一つがIT法務です。しかしその一方で、IT法務が通常の法務とどう違うのか、具体的にどのような役割を担うのか、正確に把握できている人は多くはないでしょう。今回はIT法務に関して、その概要や主な役割、求められる環境や実際に行う業務などについて、詳しく解説します。

IT法務とは

IT法務とは、ITサービスやシステム開発に関わる法務全般に対応する職種のことです。

ITの開発現場では、システムの要件定義からテスト、運用保守など、さまざまなフェーズがあり、それぞれ異なるアクションを行っていきます。それらを法的な観点から監督し、業務が正しく遂行されるようにサポートするのが、IT法務の代表的な役割です。

現代社会において、ITサービスはありとあらゆる業界・領域と関わっており、一口にITサービスと言っても、その種類は多岐にわたります。IT法務は、こうした広い対象領域に関する業界知識や法律知識を備えておくことが求められます。

IT法務が求められる企業

次に、IT法務が求められる企業について見ていきましょう。ITサービスやシステムに関わる企業の多くは、IT法務の存在が必要不可欠です。

システム開発企業(ベンダー)

ベンダーと呼ばれるシステム開発企業は、要件定義に則ったシステムを開発し、期限内に発注側に納品するのが主な仕事となります。その過程において、軽微な修正を求められることはもちろん、場合によっては要件定義から離れた過剰な修正要求や機能追加の要求が出てくるケースもあるでしょう。こうした状況を踏まえ、どのように対処するかも考慮しながら契約書を作成しなければならず、そこでIT法務の手腕が問われてきます。

過剰要求で検収が完了しない、急な仕様変更を要求される、検収後の修正依頼といったトラブルは頻出しがち。それらに対応できる契約内容にしておくことで、自社の利益を守れるようにします。また他に、SEやプログラマなどの人事労務問題も一部管轄することがあります。

システム導入企業(ユーザー)

ユーザーとなるシステム導入企業では、契約書や要件定義に則ったシステムが納品されたかをチェックする必要があります。IT法務はここで、想定とは異なる成果物が納品された場合や納品されない場合の損害賠償を含めた対応を考慮し、契約書を作成していかなければなりません。また業界特有の法令など、システムに反映すべき点があれば事前にベンダーに伝えておくことも、IT法務の仕事です。

さらに成果物が納品された後の運用・保守段階では、個人情報保護や機密情報流出防止などのセキュリティも、法的観点から監督していかなければなりません。

IT法務の主な業務

IT法務が行う主な業務について見ていきます。その業務範囲は広く、また重要性も高いものとなっています。

契約書に関わる業務

システム開発の現場では、契約書に従って開発、納品が進められるため、IT法務は想定されうるトラブルを考慮した契約書を作成し、自社への不利益を防止します。そこでは、業務範囲や賠償責任の所在、知的財産権の所属など、細部までチェックしていく必要があります。

成果物の検収と管理

成果物が契約書に従ったものになっているかを確認し、チェックをするのもIT法務の役割です。納期を守れているか、正しく機能が実装されているか、時には契約書だけではなく要件定義書や仕様書なども確認しながら、確認を進めていきましょう。

またベンダー側の場合には、検収終了の定義と期限を明確化することで、開発完了までの流れをコントールしていく役割も求められます。

セキュリティ対策と機密情報の管理

システム開発に際し、企業情報や個人情報などを共有する場合、秘密保持契約も締結しなければなりません。加えてその契約に則った形での、開発体制やセキュリティ対策の構築が必要になってきます。

ベンダー側であれば、開発段階で情報漏洩しないよう、ハード・ソフト面でのセキュリティ対策を、ユーザー側であれば機密情報流出のリスクを防ぐ対策を、IT法務主導で行っていきましょう。

また社員による情報持ち出しや口外など、人によるトラブルが発生する可能性もあるため、そこにも対応していく必要があります。

ITサービスの運用ルール整備

納品後に継続的な運用・保守が行われるITサービスの場合、それらが契約書に沿って行われているかをチェックするのも、IT法務の役割の一つです。

また開発側が権利を所有しているITサービスを利用する場合には、運用過程で利用規約違反などが発生しないように、コンプライアンス強化の取り組みも行っていかなければなりません。

不正利用や知的財産権侵害などが発生すれば、賠償義務を課せられてしまうケースもあるため、そうした事態も想定した運用ルールを整備することが大切です。

運用ルールを整備する際は、以下の要素を満たせるように作成していきましょう。

  • 運用ルールを文書化する
  • 関係者への周知・理解を徹底する
  • 関係者全員が運用ルールに納得している
  • 必要に応じて見直しを行う

これらの一つでも満たされていない場合、運用ルールが正しく守られなくなってしまう可能性があります。

法務案件管理システムで、IT法務の業務を効率化

IT法務の仕事は多岐にわたり、また必要となる知識や経験も複雑です。一方で、技術の進歩にともない、IT法務のニーズはこれからますます増加していくことになるでしょう。そうした状況に対応していくためには、IT法務一人ひとりの業務を効率化していくことが必要不可欠。

そこで活用できるのが、法務案件管理システムです。法務案件の一元管理とデータ分析を実現するOLGAの法務データ基盤モジュールなら、法務相談や契約書のチェックや管理、業務進行の手間を大幅に削減することが可能です。導入に際しての工数もかからず、スモールスタートしたい企業にもおすすめです。

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