近年、事業環境の変化が激しくなっていく中で、海外進出や新規事業、働き方改革など、変化を迫られる企業は年々増加しています。そうした中で注目度を高めているのが、企業法務という職種です。しかし、専門的な業務を担う企業法務の仕事内容は、他の職種の人々には理解しにくいことが多く、その役割を詳しく理解できている方は決して多くはないでしょう。ここでは企業法務に関して、その役割や具体的な仕事内容について、詳しく解説します。

企業法務の概要とその役割

まずは企業法務とはどういった仕事や役割を担う存在なのか、その概要と役割について解説していきます。

法律関係の業務を一手に担う、縁の下の力持ち

法務とは、その名が示す通り法律に関する業務を行う職種のことです。そして、法務の中でも企業活動に伴う法律問題の対応を、企業法務と呼びます。

法律関連の業務には、契約書の作成、法律トラブルへの対応、社内労務管理のチェックなどが含まれます。法律が関係する業務は意外なほど幅広く、企業法務が担当する仕事も多岐にわたります。

営業やエンジニアのように目立つ職種ではありませんが、法務なくしては企業運営が行えないと言っても過言ではありません。まさに企業の縁の下の力持ち的存在と言えるでしょう。

「守り」と「攻め」の役割を持つ企業法務

企業法務の役割には、法律によるトラブル発生時の対応やトラブル防止のための取り組みを中心とした「守り」と、新規事業や買収・再編といった将来に向けての取り組みを中心とした「攻め」の2つがあります。

いずれも、安定した企業活動を続けていくためには必須の要素。一般的には「守り」の役割のイメージで捉えられがちな企業法務ですが、「攻め」の際にもその力が大いに求められる、非常に重要なポジションなのです。

企業法務の重要性が増す背景

IT技術の進化により、企業をとりまく環境は大きく変化しつつあります。そのような状況下で、企業法務の重要性が高まっている背景を解説します。

事業環境の変化

IT技術のイノベーションは、あらゆる業界のビジネスに変革をもたらしています。DXの推進やテレワーク、オンラインを活用したサービス、業務の自動化など、イノベーションにより事業環境は変化し続けています。

また、グローバル化の加速も見逃せません。IT技術や交通網の発展などにより、国境を越えた取引や連携の難易度が下がったことから、近年は数々の企業が世界に進出しています。また、海外企業が日本に進出するケースも増加しました。

これらの要因による事業環境の変化は、企業法務の重要性をますます高めています。新たな制度が法令に反していないかチェックしたり、新規事業や海外展開する際に法務的なアドバイスをしたりと、専門知識を持って企業経営をサポートする必要があるためです。

予防法務の認知の広がり

SNSや口コミサイトの利用が一般的になったことから、企業や商品・サービスの良い評判だけでなく悪い評判もすぐに拡散されるようになりました。企業にとってネガティブな評判や口コミが拡散され、ブランドイメージが毀損されたり企業の信用が低下したりすることをレピュテーションリスクと言います。レピュテーションリスクは、顧客離れや取引停止を引き起こし、売上や株価の低下、企業経営へのダメージにつながる可能性があります。

レピュテーションリスクを回避し、予防法務に努めるためには、何よりも法令や公的なガイドラインを遵守し、誠実にビジネスを行うことが重要です。企業法務の法律知識は、社会的信用の低下を防ぐためにも欠かせないものとなっています。

SNS等のリスク管理

SNSの発達により、これまでは明るみにならなかった企業のコンプライアンス問題や労務違反などが話題になるケースが増加しています。従業員によるSNSでの告発は、企業のブランドイメージを低下させ、不買運動にまで発展するリスクをはらんでいます。コンプライアンスや労働環境への目線が厳しくなっている現代、社内のコンプライアンス規則や労務規則などを企業法務の観点から改めてチェックし、リスク管理に努める必要があります。

企業法務の仕事内容

企業法務は、社内の法律の専門部署として幅広い業務に携わります。ここからは、企業法務が担う代表的な仕事内容を紹介します。

契約・取引法務に関わる業務

契約書の作成や審査は、企業法務の代表的な仕事の一つです。中でも、契約書の審査は取引先とのトラブル回避のために必要不可欠です。

具体的には、取引先との契約書の内容に、自社にとって不利になる条項が含まれていないか、取引内容が適切に記載されているかなどを確認し、必要に応じて修正案を提案します。契約書を審査することで、自社の利益を最大化し、取引先と健全な関係を築くことを目指します。また、審査基準や手順などのルールを整えることも業務に含まれます。

機関法務(ガバナンス)に関わる業務

株主総会や取締役会などの活動を、法律に則って運営する機関法務は、会社法などの法律知識が求められるので、一般的に企業法務が担当します。株主総会の招集通知を送付したり、議事録を作成したり、登記の手続きを行ったりと、業務は多岐にわたります。経理や総務などの関係部署と連携して、円滑な運営を目指しましょう。また、企業の組織再編や上場対応なども機関法務に含まれます。

コンプライアンスの推進

近年、社会的にも重視されているコンプライアンスの推進は、企業の社会的信用の低下を防ぐ上でも大切です。社内規定の作成やパワハラ、セクハラなどの内部通報窓口の設置など、コンプライアンスに沿った社内ルールの策定が業務に含まれます。

また、個人情報・機密情報保護やインサイダー取引の防止など、法律に反する行為を防止するためのルール作りや周知徹底も大切です。従業員がコンプライアンスに則った行動を取れるよう、研修を実施したりe-ラーニングなどでの学習機会を提供したりといった活動も求められます。

労務・労働問題のサポート

労務が管轄する業務のサポートを企業法務が担うケースがあります。労働基準法に即した労働環境の整備やリーガルチェック、就業規則の作成、雇用契約書の作成などが該当します。残業代の未払いなどのトラブルで従業員から訴訟された場合も、企業法務が対応します。

その他、パワハラ・セクハラなどのハラスメント対応や労働基準監督署への対応なども、法律の専門知識が問われる業務です。

知的財産権に関わる業務

特許権や商標権、著作権などの知的財産権を守るための業務です。他社から知的財産権を侵害された場合は売上減少のリスクがありますし、他社の知的財産権を侵害した場合は損害賠償を請求される可能性があります。

これらのトラブルを早急に解決するため、企業法務が主導して弁護士や弁理士と連携しながら対応します。その他、新たな技術や名前などを発明した場合、特許権や商標権の登録手続きを行います。知的財産権の出願は弁理士が専門なので、適宜連携して進めます。

債権回収・債権管理の対応

未払いの債券を弁護士と連携して回収したり、債権の支払期限や時効期間の管理に関するアドバイスを各部署に行ったりするのも企業法務の役割です。債権回収が滞った場合、企業の資金繰りに影響を及ぼすリスクがあります。内容証明郵便による催告や支払督促などを行い、必要に応じて訴訟手続きを進め、企業の利益を守ります。

その他、法律に関する業務 

自社の事業に関連する法律を調査する法令調査は、コンプライアンス遵守や事業戦略にも影響を与える業務です。改正された法律に則った社内規定に変更したり、新規事業や海外展開の際には国内外の法令調査を行ったりします。法務の専門部署として、事業関連の法律知識は常にアップデートしましょう。

各部署から寄せられる相談に対応する法律相談も業務の一つです。相談主の課題を適切に把握し、解決策を提示するためのコミュニケーション力が求められます。

法務部門の効率化と未来への展望

企業法務の概要と役割、そして具体的な仕事の内容について解説してきました。ここまで説明してきた通り、多岐にわたる業務を一手に引き受ける企業法務は、企業にとって無くてはならない存在です。しかしその一方で、専門的な知識を扱う仕事だからこそ、誰しもがこの職務に付けるというものではなく、法務担当者一人ひとりに掛かる負担増が大きな課題となっているケースも少なくありません。

企業法務の力をフルに発揮させていくためには、その業務の効率化が必要不可欠。OLGAの法務データ基盤モジュールなら、法務案件の一元管理とデータ分析を可能にし、業務効率を大幅に改善することができます。

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