法務部門のナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは「企業や社員の持つ知識・経験などを共有して、創造的な経営を実践すること」と一橋大学名誉教授・経営学者である野中郁次郎先生は定義しています。
野中先生の定義を受けると、法務部門のナレッジマネジメントは「企業や社員の持つ法務知識・法務に関する経験などを共有して、法務を起点として創造的な経営を実践すること」と言えます。
一例ですが、単純な法務ナレッジの蓄積と検索だけでも具体的には下記の流れとなります。
ナレッジの蓄積
- 審査受付(メールやチャット)
- 依頼があった時にExcel等の法務管理台帳に入力
- 法務内の共有フォルダに案件用のフォルダを作成し、依頼メールや添付資料、審査対象の契約書保存
- 依頼部門との質問のやりとり・その証跡をフォルダ保存
- 外部弁護士や他部門とのやりとりがあればその証跡をフォルダ保存
- 最終回答・その証跡をフォルダ保存
- 法務管理台帳更新
ナレッジの検索
- 同一取引先の案件もしくは類似の案件でキーワード検索する
- ヒットした案件を一つ一つダウンロードしたりファイルを開いたりと確認して参考になるかどうかを確認する
法務のナレッジマネジメントの煩雑さ
法務部門がナレッジマネジメントを行うにあたっての煩雑さは次の3つの理由によるものです。
1.法務案件の多様性
法務案件には様々な種類があります。例えば、契約書のレビュー作成、新規事業等の法律相談やトラブルの相談等です。
種類が多いことにより、案件の難易度、案件完了までの作業時間や、リードタイム、ドキュメントの種類についてもばらつきがあります。
2.依頼部門や外部弁護士等の関係者の多様性
法務案件は、法務部門へ法務部門以外の全社から依頼が来る性質を持っています。そのため、案件依頼のルートが多数にわたるため、やりとりが非常に多数になります。
また、外部の弁護士や経理部門・知財部門などの他部門に対しても法務部門から照会をかけることがあり、これらの関係やの回答が法務としてのナレッジとして重要な価値を持つことがあります。
3.ナレッジの選別による問題
法務案件のうち今後も参照する可能性が高いものだけを選別して蓄積しておくことが一見良いように思います。しかし、経験上うまくいったことが少ないのではないでしょうか。
その理由は二つあります。
一つ目は、若手の法務担当者がナレッジを選別する場合は”良いナレッジかどうか”を慎重に判断することから、なかなか蓄積をする勇気が持てないからです。
二つ目は、ベテランの法務担当者はどの会社でも忙しいため、ナレッジを選別する時間がないからです。また、自分のナレッジを抱え込んでしまっている、ということも発生していたりします。
法務がナレッジマネジメントをやらない場合のデメリット
1.過去に対応した案件が散逸して探すことができず非効率
新しい法務案件に対応する際、過去に対応した案件を参考にするケースが多いです。
過去に対応した案件を参考にすると、契約書等のたたき台を手に入れることができるのはもちろんですが、法律相談の場合は、法務部門にいる専門性の高いメンバーが調べたリサーチ結果をすぐに活用することができます。いわゆる”車輪の再発明”を防ぐことができます。
しかし、法務案件は背景事情が少しでも異なれば全く別の結論や成果物になることも多いため、背景事情を慎重に吟味して参考にしなければなりません。吟味する際に情報が散逸していると、過去に対応した案件を探すのに多大な時間を使ってしまうため、業務の非効率さを助長してしまいます。
2.法務メンバーが退職した場合のリスクヘッジができない
法務案件は一期一会的な側面があり、特定の案件について担当したメンバーが深くその案件の処理プロセスについて理解していることが多いです。特に特殊な取引先や案件に対応していた場合は、そのナレッジがないと継続案件に対応できずにゼロからの検討になってしまう可能性があります。
また、法務は人材の流動性が比較的激しいことから、仮に経験豊富な人材が法務部門に所属していて難解な業務を社内で対応することができていても、その経験豊富な方が退職してしまうと、難易度の高い案件に対応できなくなってしまうことがあります。結果として、コスト増を覚悟して外部の弁護士に頼るしかなくなります。
3.参考になる過去案件が散逸しているため法務人材育成にも影響
参考になる過去案件が散逸していると、若手の法務メンバーの人材育成や中途の法務メンバーのオンボーディングにも影響が出ます。
人材育成は自社の法務に関する知識や業務をマスターしてもらうことも重要ですが、自社における法務部門としての判断をマスターしてもらうことも重要です。自社特有の業務や法務部門としての判断は書籍やセミナーで得られないものが多いことから、自社の過去案件に頼らざるを得ないからです。
4.法務ナレッジが蓄積されていないため職場満足度が下がる
法務人材は成長意欲が高いメンバーが多いです。 そのようなメンバーが自社の過去ナレッジを確認してより成長していきたいと感じるのは自然なことでしょう。
法務ナレッジマネジメントがしっかりしている組織は、前述のように人材育成にも効果が出ます。逆に法務ナレッジマネジメントがしっかりしていないと、結局は自分の力で法務案件に対応しないといけなくなるため、 成長速度が遅くなり職場満足度が下がっていくでしょう。
法務人材の採用は今後さらに激化することが予想できるため、法務ナレッジマネジメントの整備による職場満足度の向上が、採用力にも直結します。
5.回答の一貫性が担保できないため事業部門の満足度が下がる
法務部門からの回答に一貫性がなくなると、事業部門はどう行動をして良いかわからなくなるため、業務の効率化が下がることはもちろんですが、 結果として事業部門から法務部門への信頼がなくなります。
法務部門への信頼がなくなるとコミュニケーションコストが上がったり、法務部門の回答が使われなくなるということが発生し、法務部門の存在意義にも関わることでしょう。
このような状況は全社最適の観点からみても妥当ではありません。
ナレッジマネジメントを行う場合のコスト
1.法務部門のメンバーが手作業で蓄積していく方法
事業部から依頼を受けた案件を手入力でリスト化し、法務内の共有フォルダ等に案件用のフォルダを作成し、依頼メールや添付資料、審査対象の契約書保存をする方法があります。
案件情報を蓄積することは前述のように多様なファイルややりとりを整理しながら格納しないといけないことから、手間自体も大きいものですが、マルチタスクになり心理的負荷も大きくなります。
仮に手動での案件の格納について、1案件あたり手間と効率性が落ちる分のインパクトを平均15分と試算すると、月間200件の法務案件に対応している法務部門は月間で3,000分効率性がダウンしていることが考えられます。
3,000分=50時間であり、法務部門の平均コストが1時間5,000円と仮定すると、50時間✖️5,000円=月間250,000円のコスト増になっていると試算されます。
なお、仮に適切な形で格納ができたとしても、検索の性能が悪いと、結果として適切なファイルが見つからず効率性が上がらない場合もあります。共有フォルダに格納されている場合はファイルを一つ一つ開いたり、システム上に格納されている場合は一つ一つダウンロードすることで検索に15分から60分ほどかかることもあります。
2.案件の格納専門のメンバーを採用する方法
会社によっては、案件の格納のためだけにメンバーを採用するなど、人件費をかけて行なっている場合もあります。
雇用形態や給与にもよりますが、最低でも月に25万円以上はかかっている試算となります。
法務データ基盤システム OLGAの法務データ基盤モジュール による効率化
OLGAの法務データ基盤モジュールを活用すると「法務案件の蓄積」と「検索」の各段階で効率化することができます。
法務案件の蓄積
OLGAの法務データ基盤モジュール を活用すると、法務案件の受付やファイル、メッセージのやりとりが自動で OLGAの法務データ基盤モジュール 上に格納されることから、全ての法務案件蓄積のプロセスが自動化されます。
- 審査受付(メールやチャット)
- 依頼があった時にExcelの法務管理台帳に入力
- 法務内の共有フォルダに案件用のフォルダを作成し、依頼メールや添付資料、審査対象の契約書保存
- 依頼部門との質問のやりとり・その証跡をフォルダ保存
- 外部弁護士や他部門とのやりとりがあればその証跡をフォルダ保存
- 最終回答・その証跡をフォルダ保存
- 法務管理台帳更新
案件を蓄積するための手動による手間がなくなることにより、1案件あたり15分程度の業務削減に加えて、抜け漏れの軽減、心理的負荷の軽減も実現することができます。
検索
OLGAの法務データ基盤モジュール を活用すると、同一の取引先については案件に取り掛かる前に過去案件があるかどうかの確認が可能です。また類似の案件を検索する場合にも、ファイル単位ではなく案件単位で検索をすることができるため、検索の効率性が上がります。
通常の社内フォルダに格納している場合、検索にヒットした案件を一つ一つダウンロードしファイルを開いて、内容を確認して参考になるかどうかを判断する必要がありますが、OLGAの法務データ基盤モジュール はファイルをわざわざダウンロードしなくても検索結果の一覧画面でプレビューが可能だったり、メッセージの内容や参考資料も案件単位で確認できることから、検索にかける時間を大幅に削減することができます。
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