法務コラム
当事者からみるスイングバイIPOの舞台裏
投稿日:2025.05.26
1. スタートアップがスイングバイIPOで得る成長加速
スタートアップにとって、スイングバイIPOは、単独では時間のかかる成長の壁を突破し、IPOという目標達成をより確実なものにする魅力的な選択肢です。
スイングバイIPOの最大のメリットは、大企業の潤沢な経営資源(資金、信用力、ブランド、顧客基盤、技術、ノウハウなど)を活用できる点にあると石原先生はいいます。
これにより、製品開発の加速、販路拡大、優秀な人材の獲得などが容易になり、事業のスケールアップを一気に加速させることが可能です。
KDDI傘下で成長し、見事IPOを成し遂げたソラコム社のように、大企業のサポートを受けながら、IPO準備を進めることで、IPO審査における信用補完や内部管理体制構築のノウハウ共有といった恩恵も期待できます。
従業員にとってもストックオプションが絵に描いた餅でなくなる可能性が高まり、VCにとっても有望なイグジット戦略となり得るため、関係者全体にメリットをもたらすポテンシャルを秘めています。
2. 成功の鍵は「最初の握り」と「継続的なリレーション」~親会社との上手な付き合い方~
スイングバイIPOを成功させる上で、親会社となる大企業との関係構築は極めて重要です。
まず、グループジョインする最初の段階で、「スイングバイIPOを目指す」という共通認識を明確に「握る」ことが肝心です。
dely社もYahoo(現LINEヤフー)グループに参画する際、5年後の上場を前提としていたとのこと。その後は、親会社の担当者や経営層(CFO、社長、会長クラス)と定期的(2~3ヶ月に一度)なミーティングを設け、進捗共有や相談を行うなど、密なコミュニケーションを「仕組みとして」設計することが不可欠です。担当者が変わる可能性も念頭に置き、意図的に関係性を構築し続ける努力が、後の独立性を保つ上でも重要となります。
3. 「独立性」という試練~IPO審査で見られる本質と対策~
スイングバイIPOにおける大きなハードルの一つが「独立性」の確保です。親子上場の形になるため、親会社からの不当な利益供与がないか、親会社がいなくても自律的に事業成長できるかが、証券会社によって厳しく審査されます。
形式、実質両方が重要です。形式的には、親会社からの派遣役員を少数に留め、独立社外取締役を過半数にするなど取締役会の構成は重要です。
実質面では、過去3期分の取締役会議事録で社外役員の発言内容や意思決定プロセスがチェックされ、役員面談でも深掘りされます。
関連当事者取引についても、スプレッドシートへの自動出力やSlackのワークフローを活用した契約レビュー体制の構築など、俗人化を排した「仕組み」をもって漏れなく、厳格に管理するとともに、社内研修の実施によって社員の遵守意識を徹底的に作りあげることが求められます。
より詳細な内容や、石原先生の経験から語られる具体的なエピソードにご興味のある方は、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。
▼アーカイブ動画はこちらからご視聴いただけます。
https://gvamanage.com/seminar/startup-legal-conference-06