法務コラム

IPOのための法務戦略〜元東証勤務弁護士×IPO直後のGVA TECHが語る、上場準備の法務実務〜

投稿日:2025.05.22

法令適合性──AI契約レビューと法規制

弁護士法
契約書レビューをアシストするAIサービス(以下単に「AI契約書レビュー」)は、弁護士法に抵触しないかという論点が常に付きまとう。そのような重要な法的論点がある以上、実際に当社の上場審査においても審査官からの厳しい目が向けられ。

適法性の担保
審査では、考えられる法的リスクをどう評価し、どのように適法性を担保するかが問われた。プロダクトを開発・運用するうえでの外部弁護士によるレビュー体制や、CS業務の体制整備など、「違法ではない」だけでなく、「違法の疑念を生じさせない」工夫が重要だった。

意見書と第三者性の担保
上場審査にあたっては、外部の第三者による意見書取得も鍵となった。ただし、一般的に、その弁護士が業務提携関係にある場合など、「中立な第三者として評価されない可能性がある」と審査で指摘を受けた。意見書の説得力だけでなく、そのプロセス自体が「形式的に正しいか」が重視された。

 

法律事務所との兼任──「利益相反」と「独立性」

法律事務所とスタートアップの両立
代表の山本氏は、上場審査時点で自身が創業した法律事務所にも籍を置いていた。この点が、「利益相反の可能性」や「職業上の独立性」に関する確認ポイントとなった。

業務の切り分けと報酬構造の明確化
審査では、代表取締役である山本氏がどのように法律事務所とスタートアップの経営・業務を分離しているか、その報酬構造がどうなっているか等が詳細に問われたという。「法律事務所の利益のために会社が動く可能性はないか」、「会社の顧客情報が事務所に漏洩しないか」といった、形式的にも実質的にも独立性が保たれているかの証明が求められた。

将来を見据えたガバナンス設計
結果的に、法律事務所との関係性はIPO前に明確に整理され、将来的に山本氏自身が法律事務所を離れる選択肢も視野に入れることになった。これは、形式的なガバナンスを整えるだけでなく、上場企業としての信頼性・透明性を担保するうえでも避けては通れない判断であったという。

 

上場審査──財務状況と成長性の説得ロジック

上場審査における「成長ストーリー」
これからのリーガルテック業界のスタートアップとして、最初から高収益を上げるのは難しい。上場時も黒字化しておらず、赤字上場という形となったが、重要なのはその赤字が「投資先行型であること」を説明できるか否かであった。

成長KPIと収益モデルの説明責任
赤字であっても、どのようなKPIに基づいて事業が拡大しており、どのタイミングで黒字化を見込んでいるのか、ロジックと数字をもって説明する必要がある。例えば「登録契約件数の推移」、「1契約あたりの単価」、「継続率」など、具体的な数値に基づく詳細な裏付けが求められた。

 

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